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吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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徒然日記

医学論文――精神科

アルツハイマー型認知症は?病気?なのか?
【病気ではなく老化過程の?異常?】

No.4830 2016.11.19 日本医事新報

Q 東京大学名誉教授の松下正明先生は、高齢者における認知症を狭義の病気ととらえるべきでなく、生物としての人間が老化していく過程での異常とみなすべきであると述べておられると聞きました。
95歳以上では女性の9割、男性の5割が認知症になるというデータもあるそうで、確かにこれほど高率に生じる状態を病気というのも無理がある気がします。この観点についての議論を、整理してご教示下さい。(新潟県 H)

A 高齢期になると、種々の認知症性疾患が出現します。アルツハイマー型認知症をはじめとして、血管性認知症、レビー小体型認知症、神経疾患に伴う認知症、正常圧水頭症(normal pres-sure hydrocephalus:NPH)、慢性硬膜下出血など数え上げればきりがありませんが、私はその中で、アルツハイマー型認知症だけは、脳の病気としてとらえるべきではないということを年来主張しています。
もっとも、私の臨床経験で言えば、物忘れ外来で65歳以上の初診者をみると、アルツハイマー型認知症は全体の5割、血管性認知症との混合型は2割の割合でみられ、初診者を85歳以上の超高齢者に限定すると、混合型を併せたアルツハイマー型認知症は全体の9割以上を占めますので、超高齢者に限って言えば、「すべての認知症は病気でない」と言っても過言ではありません。
それほどに、アルツハイマー型認知症をどのように理解するかは、高齢者の認知症医療を考える上で、きわめて重要なことだと思われます。
周知のように、アルツハイマー型認知症の脳病変は、大脳灰白質領域でのアミロイドベータ蛋白(amyloid beta protein:Aβ)の蓄積、神経細胞内のリン酸化タウの貯留およびそれらの病変によって、大脳皮質の神経細胞が広範に損傷・破壊され、ついには消失していくことで特徴づけられます。これらの脳病変が全脳にわたっておびただしく高度に出現していると、神経病理学的にアルツハイマー型認知症と診断することになります。
しかし一方で、これらの脳病変は「老化性脳病変」とも別称されるように、人間では加齢とともに必ず出現してくるのが特徴です。生物としての人間の老化現象に必然的に伴う現象と言えます。
20世紀初頭、アルツハイマー型認知症(当時は、「老年痴呆」と称されていました)と正常の高齢者におけるそれぞれの臨床症状と脳病変の差異について多くの論議がなされ、1910年、プラハ大学のフィッシャーとミュンヘン大学のシムヒョーヴィッツによって、臨床症状においても老化性脳病変においても、アルツハイマー型認知症と正常加齢者との間には質的な相違はなく、量的な差異しか存在しないことが明らかにされて、やっと両者の間には連続性があることが結論づけられました。爾来、特に神経病理学を専門とする認知症学者の間では、正常加齢とアルツハイマー型認知症は、相互に連続性がある状態とみなされてきました。
私は、私自身の神経病理学的研究によって、1910年の彼らの報告を是とし、「両者に連続性がある」という状況を「アルツハイマー型認知症は病気でない」という文言に置き換えて表現しています。つまり、アルツハイマー型認知症においては、老化性脳病変がきわめて高度にみられるという意味では異常な脳の状態ではありますが、超高齢者になると、同様の脳病変がみられても必ずしも認知症を呈さないという意味では、病気ではないと考えられるからです。医学概論でも教わるように、異常であることと病気であることとは、同義的ではありません。
なお、私と同様に、アルツハイマー型認知症を病気とみなすことに反対している米国のホワイトハウスらは、上記の神経病理学的所見の連続性に加えて、臨床的にもアルツハイマー型認知症と正常加齢との区別は恣意的である、アルツハイマー型認知症は加齢と並行して指数関数的に増加する、アルツハイマー型認知症でみられる症状は超高齢者でもみられ、その頻度は年齢に比例する、という事実を、その理由として挙げています。
【参考】
● 松下正明:神研の進歩、1985;29(4):564-76.
● 上智大学生命倫理研究所、編:脳科学に何が期待できるか―脳と倫理.上智大学出版、2012、p29-54.
● 松下正明:生存科学.2015;26(1);21-34.
【回答者】
松下正明 東京大学名誉教授