内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

遠野言葉を想う

若竹 千佐子

 

遠野を離れてもう30年以上が経(た)ちます。もうこちらでの生活の方が長くなってしまいました。それでも遠野はいつもすぐそこにあります。言葉が私と遠野を一直線に繋(つな)ぐのです。懐かしい含蓄のある言葉が遠野にはいっぱいあります。

私は遠野の言葉が好き。もう大好き。震い付きたくなるくらい。当ったり前、私はこれで大きくなったのだもの。嫌いになれるわけないじゃない、独り言(ご)ちて。でもすんなりそうだっかというと、そでもねぐ、反抗期もやはりありました。子どもの成長と同じですね。

この年になると、郷里を遠く離れていても、遠野弁は心の隅々にまで染み込んでいると感じます。

ではどんな言葉が好きなのかというと、これはいっぱいあるけれど、「何如(なんじょ)にすべがぁ」「何如ったり」の2語。

人生のたいていのことはこの2つの言葉で事足りると思いませんか。

長く生きていれば、何如にすべがぁと思い悩むことの1つや2つはあります。あれこれと思案して、なるようにしかなんね、と思い、そんどぎはそんどぎのごどと思い定めて、何如ったりと心で叫ぶとき、進むべき道はもう決まっているように思います。悲しいあきらめがあるかもしれない、投げやりな気持ちもあるにはある。でも逃げるわけにはいかないのです。これが自分の運命なら仕方がない、正面切って戦いを挑んで行こうとする覚悟のある言葉な気がします。

言葉そのものに捨て身の意地というか負けず嫌いの人生哲学が込められているのですね。

とは言え、何如ったりの潔さにあこがれつつ、いつまでも決断できないでずるずると悩み続けることもあります。実は私もそうでした。

若い頃は中学の国語の先生になることが夢というか具体的な目標でしたが、これが何回採用試験に挑戦しても受からない。毎年毎年不採用のはがきを手にして真っ暗になり、夜も眠れず明け方少しうとうとして目覚めると障子の隙間に半紙が1枚。父が几帳面(きちょうめん)な墨字で毎年決まって同じ文句で「今に見ていろ、僕だって見上げるような大木に」と書いてあるのです。あれには参りました。私は小さい頃から大柄で太っていたので、その当時から十分に見た目大木だったのですが、父はそれをからかいつつ私を励ましていたのです。

それでまた立ち上がり、受験すること都合6度。ついに夢叶(かな)わず、あの時の母の言葉も忘れられません。「仕方がね、いづか笑えるどきもくっから」。3人姉妹の長女、男勝りの母は「てしたごどねでば、何それぐれ」が口癖でした。その母の慰めの言葉も胸に沁(し)みました。

思えば、私の周りにはなんと優しい滋味にあふれた言葉があったのでしょう。

言葉って不思議です。

言葉1つで、その時の想いや情景、色形匂いまでまざまざと思い起(おこ)させてくれます。その土地で受け継がれた言葉で語られるとしたらなおさら味があると思うのは私だけではないでしょう。

金太郎飴(あめ)の標準語はそれはそれとしての役割があるとして、その土地ならではの汗も涙も染み付いた言葉も大事に大事に守っていかなければ、言葉はすぐに標準化されて逃げて行ってしまいます。

私は言葉に拘(こだわ)りたい。

言葉の背後にある積み重ねられた思いを表現したいと思っています。耳で聞いて楽しい、口伝えの口承文芸のような小説を1本でも多く書いてみたいというのが今の私の目標です。

実は先日遠野に帰りました。「同級生をやんべやんべ、やんべす、となりました」。遠野の友達のメールです。その言葉で思いは一挙に遠野でした。

遠野の言葉はいつだって今だって、ぬっき。