内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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保険取扱

吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

おらおらでひとりいぐも

若竹 千佐子  河出書房新社

 

桃子さんはため息を吐(つ)きつつも前を見た。そのまま、冷蔵庫に直行して、ドアを開け、缶ビールを取り出すと立ったまま飲み始めた。ひとしきり飲んであたりを見回すと、もうずいぶん暗くなっている。缶を手に持ったままよたよたと部屋の隅によって蛍光灯を点け、振り返ると出窓のところに女が1人立っていた。白髪(しらが)交じりの蓬髪(ほうはつ)の女、すぐに山姥(やまんば)だと思った。どうしてうちにいるのだろうと訝しく、しばらくして桃子さんは、あはあはと笑ってどたんと椅子に座った。

降り続く雨をいいことに、ろくに髪もとかさず、身なり構わず、ザンバラの白髪交じりの女は出窓に映った自分の姿だと気が付いた。静かな部屋に桃子さんの笑い声が響いて、それから歌うように笑うように陽気に独りごつ。

 

――中略――

 

山姥か。山姥だ。

もう誰からも奪うことがない、奪われることもない。風に吹かれて、行きたいところに行く。休みたいところに休む。もう自由だ、自由なんだ。

だいたい、いつからいつまで親なんだか、子なんだか。親子といえば手を繋ぐ親子を想像するけれど、ほんとは子が成人してからのほうがずっと長い。かつての親は末っ子が成人するころには亡くなってしまったそうだけど、今の親は自分の老いどころか子の老いまで見届ける。そんなに長いんだったら、いつまでも親だの子だのにこだわらない。ある一時期を共に過ごして、やがて右と左に分かれていく。それでいいんだと思う。

それでもちゃんと覚えているのだ、大事だということを。

とろんとした目で桃子さんはうなずく。

目に映じているのは母ちゃんの姿である。

帰るに帰れなかった故郷、許されて帰ったのは父の葬儀のどぎだった。結局兄も都会に出て所帯(しょたい)を持って、広い家に母ちゃんひとりが取り残されだ。ひと回りもふた回りも小さくなって、もう何の役にも立たないと嘆いていたが、なんの、桃子さんにしてみればあの頃の母に一番力づけられる。あの後あの家で独り23年生ぎだ。母にできたことは自分もできると思いたい。でも母ちゃんにはやっぱりかなわない。空に献じてまた飲んだ。