内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

人間の実相

釈迦――仏説(ぶっせつ)譬(ひ)喩(ゆ)経(きょう)

 

ある日、釈迦(しゃか)の法話会場に、一人の王様が参詣(さんけい)した。名を、勝光(しょうこう)王(おう)という。

初めて仏法を聴(き)く勝光(しょうこう)王(おう)に、釈迦(しゃか)は、「人間とは、どんなものか」を例(たと)えで説いたのである。

王よ、それは今から幾億(いくおく)年(ねん)という昔のことである。ぼうぼうと草の生(お)い茂(しげ)った、果(は)てしない広野を、しかも木枯(こが)らしの吹(ふ)く寂(さび)しい秋の夕暮れに、独(ひと)りトボトボと歩いていく旅人があった。

ふと旅人は、急ぐ薄暗(うすぐら)い野道に、点々と散らばっている白い物を発見して立ち止まった。いったい何だろうと、一つの白い物を拾い上げて旅人は驚(おどろ)いた。なんとそれは、人間の白骨ではないか。どうしてこんな所に、しかも多くの人間の白骨があるのだろうか、と不気味な不審(ふしん)を抱(いだ)いて考(かんが)え込(こ)んだ。

そんな旅人に、まもなく前方の闇(やみ)の中から、異様なうなり声と足音が聞こえてきた。闇(やみ)をすかして見ると、彼方(かなた)から飢(う)えに狂(くる)った、見るからに獰猛(どうもう)な大虎(おおとら)が、こちら目掛(めが)けて、まっしぐらに突進(とっしん)してくるではないか。

旅人は、瞬時(しゅんじ)に白骨の散らばっている意味を知った。自分と同じく、この広野を通った旅人たちが、あの虎(とら)に食われていったに違(ちが)いない。同時に旅人は自分もまた、同じ立場にいることを直感した。驚(おどろ)き恐(おそ)れた旅人は無我夢中で、今来た道を全速力で虎(とら)から逃(に)げた。

しかし、所詮(しょせん)は虎(とら)に人間はかなわない。やがて猛(もう)虎(こ)の吐(は)く、恐(おそ)ろしい鼻息を身近に感じて、もうだめだと旅人が思った時である。どう道を迷って走ってきたのか、道は断崖(だんがい)絶壁(ぜっぺき)で行(ゆ)き詰(づ)まっていたのだ。

絶望に暮れた彼は、幸いにも断崖(だんがい)に生えていた木の元から一本の藤(ふじ)蔓(づる)が垂れ下がっているのを発見した。旅人は、その藤(ふじ)蔓(づる)を伝ってズルズルズルーと下りたことはいうまでもない。

文字通り、九死に一生を得た旅人が、ホッとするやいなや、せっかくの獲物(えもの)を逃(のが)した猛(もう)虎(こ)は断崖(だんがい)に立ち、いかにも無念そうに、ほえ続けている。

「やれやれ、この藤(ふじ)蔓(づる)のおかげで助かった。まずは一安心」と旅人が、足下を見た時である。旅人は思わず口の中で「あっ」と叫(さけ)んだ。

底の知れない深海の怒濤(どとう)が絶えず絶壁(ぜっぺき)を洗っているではないか。それだけではなかった。波間(なみま)から三匹の大きな竜(りゅう)が、真(ま)っ赤(か)な口を開け、自分の落ちるのを待ち受けているのを見たからである。旅人は、あまりの恐(おそ)ろしさに、再び藤(ふじ)蔓(づる)を握(にぎ)り締(し)め身震(みぶる)いした。

しかし、やがて旅人は空腹を感じて周囲に食を探して眺(なが)め回(まわ)した。

その時である。

旅人は、今までのどんな時よりも、最も恐(おそ)ろしい光景を見たのである。

藤(ふじ)蔓(づる)の元に、白と黒のネズミが現れ、藤(ふじ)蔓(づる)を交互(こうご)にかじりながら回っているのではないか。やがて確実に白か黒のネズミに、藤(ふじ)蔓(づる)はかみ切られることは必至(ひっし)である。絶体絶命の旅人の顔は青ざめ、歯はガタガタと震(ふる)えて止まらない。

だがそれも長くは続かなかった。それは、この藤(ふじ)蔓(づる)の元に巣を作っていたミツバチが、甘(あま)い五つの蜜(みつ)の滴(したた)りを彼の口に落としたからである。旅人は、たちまち現実の恐怖(きょうふ)を忘れて、陶然(とうぜん)と蜂蜜(はちみつ)に心を奪(うば)われてしまったのである。

釈迦(しゃか)がここまで語ると、勝光(しょうこう)王(おう)は驚(おどろ)いて、

「世(せ)尊(そん)、その話は、もうこれ以上、しないでください」

と叫(さけ)んだ。

「どうしたのか」

「その旅人は、なんとバカな、愚(おろ)かな人間でしょうか。それほど危ない所にいながら、なぜ、五(ご)滴(てき)の蜜(みつ)くらいに、その恐(おそ)ろしさを忘れるのでしょうか。旅人がこの先どうなるかと思うと、恐(おそ)ろしくて聴(き)いておれません」

「王よ、この旅人をそんなに愚(おろ)かな人間だと思うか。実はな、この旅人とは、そなたのことなのだ」

「えっ、どうして、この旅人が私なのですか」

「いや、そなた一人のことではない。この世の、すべての人間が、この愚(おろ)かな旅人なのだ」

釈迦(しゃか)の言葉に、聴衆(ちょうしゅう)の一同は驚(おどろ)いて総立ちになった。