内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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保険取扱

吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

両方の眼を持つこと

 

なんとかして日本人本来の、自然を細かく見る眼を養いたいものである。それはこれからの教育次第であって、日本古来の接写レンズ的な眼と広角レンズ的な眼の両方を持つようになったら、それこそ鬼に金棒だと思うのである。ではどうすればよいのか。ここに、こんな子供の作文がある。

あきになってだんだんすずしくなりました

おもう様 おたたさま ごきげんよくあらしやいますか

迪宮(みちのみや)もじようぶで 毎朝すこしおさらひをして それから山や野原などへあみ

を持つて 蟲とりにでゝうんどうをします

「迪宮」とあるから分かる人には分かるけれど、子供といってもただの子供ではない。昭和天皇である。これは、1910年9月15日に葉山から送られた葉書の文面である。天皇は1901年のお生まれであるから、9歳の時に書かれたもの、ということになる。「山や野原などへあみを持つて 蟲とりにでゝうんどうをします」、すなわちこの時代、「正しい」男の子は、まず虫捕りをするものと考えられていたのである。やがて、それがもう少し本格的になり、昆虫採集ということになる。幼少時に自然の中で遊ぶ。そして虫など小動物を捕ろうと眼を凝らす。ぼんやりしていては虫は捕まえられない。まわりをよく見、気配を感じ取り、動作は俊敏でなければならない。花に止まり、呼吸でもするように、ゆっくり羽搏(はばた)きながら蜜を吸う蝶の翅の輝き。首尾よく捕まえた時の嬉しさ。あるいはクヌギの幹で樹液を舐めるカブト、クワガタを発見した時の胸のときめき。ギンヤンマを網にした時の興奮――ある時期までにこうした感覚、感情を養成することが人間にとって有益であることは言うまでもあるまい。かつての日本人はこうして眼と感覚を養ったのである。これを野蛮な、原始的な狩猟本能と言って非難する人もいるであろう。しかし、もともと人間も生物の一種である。その本能が創造性にもつながるのだ。それからあまり離れてはいけない。セルフ・ドメスティケーション、自己家畜化という言葉があるけれど、本能を鈍らせては人も家畜になってしまう。安全そのものの人工的環境の中で、飽食し、油断しきって暮らしていると、家畜的に変形してしまうのだ。猪と豚、狼と座敷犬とを比べれば分かることだが、家畜なら、耳が垂れ、顔が寸詰まりになって、幼獣の顔のまま成長する。人間なら歯の数が減り、顎が小さくなって、ラッキョウ顔になる。それがいわゆるネオテニー、つまり幼形成熟である。もっとも、人間が知能を発展させたのはその現象のおかげという説もある。外見上も、果たして人間は美しいのか。危険を感じ取る能力を持ち、いざとなると全速力で走ることができるから野生動物は美しいのであるが。我田引水をまた繰り返そう。捕まえた虫を手にとって眺め、その手触りを知る。ぶるぶるっと手の中で身を震わせるギンヤンマ。エナメルを塗ったようにぴかりと光るその色。カブトムシの肢の棘の痛さ。金色の微毛の生えたその翅鞘の硬さ、雑木林全体にも通じるその野生の匂い。これを絵に描くと、細部を見る眼が確かなものになる。虫眼鏡で見ると、今まで見えなかったものが見えてくる。さらに顕微鏡を覗くと、拡大倍率に従って、いくらでもその奥の世界がある。望遠鏡で見るマクロの宇宙と同じく、ミクロの宇宙が眼の前に出現するのである。その中にこそ美があり、これを楽しむことが人間の特権であるというのが、私の言いたかったことなのである。

 

虫から始まる文明論  奥本 大三