内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

ニセ科学への道は〇〇で舗装されている

水からの伝言

コンタミ――科学汚染   伊与原 新  講談社

 

「『水からの伝言』。20年ほど前、そういうタイトルの写真集が出版されて、評判になったんですよ」

「氷結晶の写真集なんですか」

「ええ。〈ありがとう〉〈愛〉〈感謝〉などの言葉を見せた水は整った樹枝(じゅし)状の結晶になり、〈ばかやろう〉〈むかつく〉〈殺す〉といった言葉を見せると崩れた結晶になる。そんな話が写真とともに紹介されてるんです」

「まさしくそれだ」

「音楽バージョンもありましてね。結果は想像がつくと思いますが、クラシックを聴かせるときれいな結晶。ヘビメタを聴かせると汚い結晶」

「ほんとにそんなのが評判になったんですか? ちょっと信じられないんですけど」

「感動を呼ぶ写真集として、当時はベストセラーになりましてね。私も驚きましたよ。今や世界各国で翻訳されていて、シリーズ累計発行部数、数百万部とかって話です。まともな科学啓蒙書はまったく売れないってのにねえ」

「作者はどんな人なんですか?」

「そこなんですよ。作者は――故人ですが――波動ビジネスの親玉みたいな人物でしてね。彼の会社とそのグループは、波動測定器や波動グッズの販売とか、波動カウンセリングを商売にしています。ですから、もともと『水からの伝言』という本は、彼らの波動ビジネスの販促品だったわけですよ。いい話(、、、)なんかじゃありません」               中略

「一時期、『水からの伝言』を使った道徳の授業が、全国の学校に広まったんです。大きな教員の団体が、これを使った指導案をウェブサイトで紹介しましてねえ」

「どんな授業なんですか」

「まず、『水からの伝言』に載っている結晶の写真を子どもたちに見せて、言葉には結晶の形を変えるほどの力があることを説明します。人間の体の大部分は水でできているので、言葉は人間の体にも影響を与える。だから、友だちには汚い言葉、乱暴な言葉を使ってはいけない、と教えるわけです」

「なるほど。ある意味、よくできてますね」

「そうなんですよ。だから広まってしまった。そのうちに、派生バージョンもいろいろ生まれましてね。1ヵ月間きれいな言葉をかけ続けたりんごと、罵声(ばせい)をあびせ続けたりんごを比べると、罵声をあびせたほうだけが腐(くさ)っている、とか。ごはんを使った例もあります。現場の先生方も、道徳の授業をなんとか面白くしようと知恵を絞ってるんでしょうけどねえ」

「絞る方向が間違ってますよね」

ニセ科学への道は善意で舗装されている――。先日の羽鳥のTシャツの言葉をあらためて嚙みしめる。もちろん教師たちには微塵(みじん)の悪意もない。波動ビジネスについても知らないはずだ。純粋に、子どもたちの心により響く題材を、と考えてのことだろう。とはいえ、そのためには科学的な正しさをないがしろにしても構わないという神経には、やはりうすら寒いものを感じてしまう。

「もう10年以上前のことですが、知り合いの子どものクラスでその授業がおこなわれていましてね。一部の保護者から、おかしいんじゃないかと声が上がった。私、理科教育を専門にしているものですから、その知り合いに頼まれましてね。彼らと一緒に担任のところへ直談判(じかだんばん)に行ったんです。校長もまじえて話をすることができたんですが、校長、何て言ったと思います?」

「何だろう……そんな授業が行われているなんて知りませんでした、とかですか」

「それならまだよかったんですがねえ」田所は力なく微笑んだ。「そこの校長、『理科の授業ではないんですから、問題ないんじゃないですか』と言ったんですよ」

さすがにため息がもれる。「――救いようがないな」