内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

シチリアンに学ぶ

「石巻新聞」1998年1月1日     浅田 次郎

 

昨年夏シチリアを旅して、何よりもまず驚いたのは中年男性の美しさだった。

私はべつだんそちらの趣味があるわけではないが、正直のところパレルモの町を歩いていても女性には目が向かず、自分と同じ年頃のオヤジにばかり心ひかれた。

容姿、表情、動作、ファッション、すべてが映画俳優のように整ったオヤジどもが、ぞろぞろと歩いているのである。「心ひかれた」は多少オーバーにしても、ともかくほれぼれするほど格好がいい。

ふしぎなことには、20代30代の若い男たちはさほどでもない。こちらはむしろパリジャンに比べれば明らかに田舎くさい。しかし40代になると、美しく装うことがまるで習性であるかのように、誰もがカッコよくなるのである。

当然、町なかのメンズ・ブティックは、女性物のそれを圧倒している。オヤジどもは昼ひなかからお目当てのブティックにたむろして、あれやこれやとお買い物に忙しい。そしてサマー・タイムの、夜9時すぎまで続く不確かなたそがれどき、極めつきのおしゃれをして町に出てくる。街角のピッツェリアやバールは、粋でセクシャルなシシリアンで溢れ返り、とうてい若い男どもの出る幕などない。

イタリアの男は当たるを幸い女性を口説くといわれるが、彼らにしてみればそれは道楽というよりむしろ礼儀であるらしい。ひとり歩きの女性に対してはやさしく微笑みかけ、とりあえず「ブォナ・セーラ」と囁くのが当然の礼儀なのである。身なりにふさわしいそうした行動が、外国人から見れば当たるを幸い女性を口説いているかのように見えるのであろう。

成田に戻ったとき、いや帰途のパリ空港で日本人のビジネスマンやツアー客と出会ったとき、幻滅するよりもまず悲しい気持になった。日本人のオヤジの貧しさを感じたのである。

体力が衰え、体型が崩れてくれば美しく装うことをあきらめてしまう。背広はサラリーマンの制服になり下がり、ネクタイをはずせばこれもお揃いのゴルフ・ウェアかトレーニング・ウェアになる。全員がそれでよしとしているから、おしゃれなメンズ・ブティックなどほとんど存在せず、倉庫のように巨大な郊外の安売り店ばかりが繁盛する。

人間本来の魅力は体力よりも体型よりも、年齢とともに備わる色気と知性であるということを、日本人は誰も気付いてはいない。この点については女性もまた然りである。

少なくともシチリアのオヤジどもを観察したかぎり、男は60歳を過ぎるまで、まこと成熟する果実のように、美しく格好よくなって行く。

仕事に振り回され、日常に埋没し、40を境に醜くなって行く日本のオヤジは、美しくなるべき自然の権利を自ら放棄しているのである。