内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科
吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。
高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に
内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

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吉川内科小児科 生薬方剤による漢方診療(保険適用)

吉川内科小児科は、愛知県名古屋市中村区、名古屋市立豊臣小学校の西にある内科小児科医院です。高血圧や、肥満などメタボリックシンドローム、リセット禁煙、漢方診療(保険適用)を中心に内科・小児科・アレルギー科・リハビリテーション科の診療をしています。お気軽にご相談ください。

徒然日記

てつがくのライオン

――詩集『昭和37年―昭和47年』――      工藤 直子

 

ライオンは「てつがく」が気に入っている。かたつむりが、ライオンというのは獣の王で哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。

きょうライオンは「てつがくてき」になろうと思った。哲学というのは坐りかたから工夫した方がよいと思われるので、尾を右にまるめて腹ばいに坐り、前肢を重ねてそろえた。首をのばし、右斜め上をむいた。尾のまるめ工合からして、その方がよい。尾が右で顔が左をむいたら、でれりとしてしまう。

ライオンが顔をむけた先に、草原が続き、木が1本はえていた。ライオンは、その木の梢(こずえ)をみつめた。梢の葉は風に吹かれてゆれた。ライオンのたてがみも、ときどきゆれた。

(だれか来てくれるといいな。「なにしてるの?」と聞いたら「てつがくしてるの」って答えるんだ)

ライオンは、横目で、だれか来るのを見はりながらじっとしていたが誰も来なかった。日が暮れた。ライオンは肩がこってお腹がすいた。(てつがくは肩がこるな。お腹がすくと、てつがくはだめだな)

きょうは「てつがく」はおわりにして、かたつむりのところへ行こうと思った。

「やあ、かたつむり。ぼくはきょう、てつがくだった」

「やあ、ライオン。それはよかった。で、どんなだった?」

「うん。こんなだった」

ライオンは、てつがくをやった時のようすをしてみせた。さっきと同じように首をのばして右斜め上をみると、そこには夕焼けの空があった。

「あゝ、なんていいのだろう。ライオン、あんたの哲学は、とても美しくてとても立派」

「そう?…‥とても…‥何だって?もういちど云ってくれない?」

「うん、とても美しくて、とても立派」

「そう、ぼくのてつがくは、とても美しくてとても立派なの?ありがとうかたつむり」

ライオンは肩こりもお腹すきも忘れて、じっとてつがくになっていた。

 

工藤直子の『昭和37年-昭和47年』という詩集には、パリにあこがれるくじら、殻の中でそっとウエストをはかるかた(・・)つむり(・・・)、ふとりたくないろば(・・)、笑い上戸(じょうご)の犀坊(サイボウ)、さびしさのあまり餌(えさ)である縞馬(しまうま)と硬い友情を結んでしまうライオン、さまざまの動物が出てきます。かれらはいたって友情厚きものどもで、その友情は、うるさい心理の屈折がなく、淡々として清らかです。

「てつがくのライオン」にもそれがよく出ています。

別に哲学者をひやかしているわけではないんですが、ともだちのかたつむりが美しい夕焼け空を、哲学そのものと思いこんでしまったのがすばらしい。ライオンも哲学の本体なんかどうでもいいと思っているらしいところがおかしいのです。威風(いふう)堂々(どうどう)のライオンは、深遠なことを考えていそうな様子ですが、ほんとうはライオン語でたてがみの具合なんかばっかり気にしているのかもしれない。

私はときどき思い出して、彼らに会いたくなり、『工藤直子詩集』をひらきます。なつかしく心が洗われるようです。

(詩のこころを読む  茨木のり子)